モバイルバッテリー(モバイル電源、モバイル充電器)を原因とした火災・発火事故の報道が相次いでいます。特に、東京都杉並区のマンションでの出火や、山手線車内での発火事故など、身近な場所で起きた事例には私たちも危機感を持たざるをえません。
本記事では、これらの火災事案の概要を整理するとともに、リコール制度・PSEマークの意味、購入・使用時のチェックポイントなどを分かりやすく解説します。
最近の火災・発火事例の概要
杉並区マンションでの出火(2025年9月)
2025年9月、東京都杉並区阿佐谷南の5階建てマンションの一室で、「モバイルバッテリーから出火して火事」という通報がありました。
火災は深夜(午前1時50分ごろ)に発生し、住人6名が搬送されました。現場の報道では、「スマートフォンをモバイルバッテリーに繋いで充電をしていた。寝ていた時に音がして見たら、バッテリーから火が上がっていた。」との住人説明もあります。
このような集合住宅での火災は、延焼リスク・避難の難しさから被害が膨らみやすく、非常に危険です。
山手線車内でのモバイルバッテリー発火(2025年7月)
2025年7月、JR山手線の車内でモバイルバッテリーが発火し、車内混乱を招いたとの報道がありました。電車内という公共空間で発火が起きれば、他の乗客・車両設備にも甚大な影響が出る可能性があります。
発火したバッテリーは2022年6月にリコールが開始されていた「cheero Flat 10000mAh」であると報道されており、その販売元である会社が今回の事故についてサイトで報告しています。
→販売元cheeroによる調査結果の報告
国民生活センターもこの事故を受けて注意喚起をしています。
モバイルバッテリーのリコール制度とは
リコール制度・自主回収の仕組み
リコール(回収・無償修理/交換・返金)は、製品に重大な安全欠陥のおそれがあると認められた場合、製造者または販売者が自主的に回収措置を講じる制度です。
日本では、製品安全に関する法律に基づき、消費者庁・経済産業省・国民生活センターなどがリコールの監督・情報提供を行います。
モバイルバッテリーは、リチウムイオン電池を内蔵している製品であり、発火・発煙のリスクがあるため、欠陥があると判断されればリコール対象になり得ます。
過去のモバイルバッテリーリコール例と注意点
たとえば、Anker の一部モバイルバッテリー製品(10000mAh・20000mAh 等)はリコール(自主回収)対象となった例があります。リコール報告
回収対象となる型番・シリアルナンバーの範囲を公表し、ユーザーが対象かどうかを確認できるようにしています。
ただし、すべての発火事故が即「リコール対象製品使用」に起因するとは限らず、劣化・過充電・異物混入・誤使用など複合的要因も関わることがあります。
PSEマークとは?安全性の指標としての意味
PSEマークの基礎知識
PSE(Product Safety Electrical Appliance & Material)マークは、日本国内で電気用品を流通させる際、安全基準を満たしていることを示すマークです。
電気用品安全法(電安法)により、対象となる電気器具・部品は、定められた技術基準に適合しなければ国内で販売できません。
モバイルバッテリーは「電池を含む充電器」などのカテゴリで、PSEマークが義務付けられるケースがあります。
PSEマーク表示の見方と注意点

- PSEマークは必ず製品本体やラベルに表示されています。丸型または菱形(ひしがた)で表されます。
- 「菱形PSE」は特定電気用品、「丸形PSE」は非特定電気用品の表示形式です。
- マーク表示だけで安全性が完全に保証されるわけではなく、正規認証・認定試験を経た製品であるかどうか、表示内容(認証番号など)が正しいかをチェックすることも重要です。
- 海外製品や並行輸入品など、PSE取得していないものが混在して流通していることもあります。そうした製品はリスクが高くなります。
モバイルバッテリー購入・使用時のチェックポイント
購入前の確認項目
- 型番・仕様・容量
特定リコール対象型番や過去の不具合例がないか、メーカー公式サイトで確認する。 - PSEマーク表示の有無・認証番号
表示されているか、偽造でないかをチェック。 - 販売ルートの信頼性
正規代理店・ブランド直販店で購入する。ノーブランド・無名製品はリスクが高い。 - レビュー・口コミの確認
発火事故・異常報告がないか、第三者レビューを参考にする。 - 保証・サポート体制
保証期間、メーカーサポート・回収対応の実績があるかを確認する。
使用・保管時の注意
- 充電中は高温になる場所を避ける
- 満充電後は速やかに外す(過充電・過放電を避ける)
- 急激な発熱・膨張・異臭を感じたら使用を中止する
- 大電流を必要とする機器との併用は注意する
- 長期間使用したバッテリーは早めに買い替える
- 耐火バッグや不燃材近くでの保管も有効
まとめと取るべきアクション
- 杉並区マンションや山手線車内での発火・出火事故は、モバイルバッテリーの安全性に対する現実的な警鐘です。
- 事故報道では、「リコール対象製品との一致可能性」が指摘されている事例もあり、リコール情報を無視できません。
- PSEマークは安全性の目安ですが、表示だけで安心せず、型番・保証・レビューなどを併せて確認するべきです。
- 日常の使用・保管ルールを守ることで、発火リスクを下げることが可能です。
- 手元にあるモバイルバッテリーがリコール対象かどうか、メーカーサイトや国民生活センターなどで早めにチェックしておきましょう。


