アメリカで急増するSNS依存症訴訟とMDL制度の最新動向

スマホをみている男の子と裁判所 時事ひとしずく

アメリカではSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)企業に対する訴訟が急増しています。特に、青少年のSNS依存症や精神的健康への影響を巡る訴訟が注目されており、これらはMDL(マルチディストリクト訴訟)制度を通じて効率的に処理されています。

この記事では、MDL制度の概要と、SNS依存症訴訟の現状について詳しく解説します。

MDL(マルチディストリクト訴訟)制度とは?

MDLの目的とメリット

MDL(Multidistrict Litigation)制度は、複数の連邦裁判所に分散している同種の訴訟を一つの裁判所に集約し、効率的に処理するための制度です。これにより、証拠開示や証人尋問などの手続きが統一され、訴訟の重複や矛盾を避けることができます。

SNS依存症訴訟におけるMDLの適用

SNS依存症に関する訴訟は、複数の州で同様の主張がなされており、MDL制度を通じて効率的に処理されています。これにより、訴訟の迅速な進行と一貫性のある判断が期待されています。


SNS依存症に関する訴訟の現状と主要な論点

訴訟の概要

2022年10月、カリフォルニア州北部地区連邦地裁において、SNS依存症に関する訴訟がMDL No. 3047として集約されました。この訴訟では、Meta(Facebook、Instagram)、TikTok(ByteDance)、Snap(Snapchat)、YouTube(Google)などの大手SNSプラットフォームが被告となっています。

主な論点

  • 製品責任と過失:SNSプラットフォームが意図的に依存性を高める設計を施し、青少年に有害なコンテンツを推奨しているとされ、過失や製品責任に該当すると主張されています。
  • Section 230の適用範囲:SNS企業は、通信の自由を保障するSection 230を盾に免責を主張していますが、裁判所はこれがすべての訴因に適用されるわけではないと判断しています。

Section 230(セクション230)は、アメリカの通信品位法(Communications Decency Act)の一部で、SNSやウェブサービス運営者の法的責任を制限するルールです。
ユーザーが投稿した内容の責任は基本的にユーザーにある
→SNS企業は、ユーザーの投稿に対して基本的には責任を問われません。
コンテンツの編集や削除も認められる
→有害コンテンツを削除したり、推奨しないように編集しても免責されます。


ベルウェザー裁判と今後の展開

2025年6月、裁判所は最初のベルウェザー裁判として11件の訴訟を選定しました。これらの訴訟は、SNS依存症が青少年に与える影響を評価するための重要な指標となります。特に、摂食障害を訴える原告(例:Caroline Koziol氏の訴訟)は、SNSのアルゴリズムが健康に与える影響を浮き彫りにしています。

ベルウェザー裁判(Bellwether trial)とは、多数の類似訴訟の中で「代表的な訴訟」として先行して行われる試験的な裁判のことです。簡単に言うと、大きな集団訴訟(MDLなど)で、全体の見通しを立てるためのテストケースです。


日本との関連性と今後の展望

日本でもSNSの利用が広がる中、青少年の精神的健康への影響が懸念されています。アメリカのMDL訴訟の動向は、日本におけるSNS規制や企業の責任論に影響を与える可能性があります。特に、企業の設計責任やコンテンツ推薦アルゴリズムの透明性など、国際的な議論の一環として注目されています。

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